民法改正! 消滅時効は大きく変わりました!
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こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。

この記事では民法改正により、消滅時効についてどのような変更があるかについて解説します。平成29年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」が 令和2年4月1日から施行されました。民法には契約等に関する最も基本的なルールが定められており、この部分は「債権法」と呼ばれます。改正される前は制定されてから約120年もの間見直されることはありませんでしたが、大きく変化する社会経済に対応する為によりわかりやすく見直された新しい制度です。

新人司法書士新人司法書士

大きく変わったようだけど、まだ詳しくは学習していないです。

司法書士の本松司法書士の本松

同じような方も多いと思いますよ。それでは詳しく解説していきますので、一緒に学習しましょう。

今回のポイント

【民法改正による消滅時効の変更点】

  • 客観的起算点と主観的起算点
  • 商事消滅時効の廃止
  • 時効の援用権者
  • 適用日付と経過措置における注意点

客観的起算点と主観的起算点

改正前の民法では、時効期間のカウントは「客観的起算点」からスタートしていました。改正民法ではこれに加えて「主観的起算点」という概念も加わりました。権利を行使できる時からスタートするのが客観的起算点、権利を行使できると知った時からスタートするのが主観的起算点です。

改正民法ではこの2つの起算点を用いて、時効期間が権利を行使できる時(客観的起算点)から10年、権利を行使できると知った時(主観的起算点)から5年のいずれか早い方が到来した時点となりました。また、時効には中断や停止という概念がありますが、それぞれ「更新」「完成猶予」と名称が改められました。

改正前 改正後
起算点・時効期間

権利を行使できるときから10年 

権利を行使できるときから10年(客観的起算点)
または
権利を行使できると知ったときから5年(主観的起算点) 
※いずれか早い方

時効障害事由(裁判上の請求等)用語

中断 更新

時効障害事由(催告等)用語

停止 完成猶予

 

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
引用元:第166条第1項
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
引用元:民法第147条

商事消滅時効の廃止

旧法では、商取引債権の時効については民法が適用されず商法の商事消滅時効の規定(旧商法第522条)が適用されていたため、商事債権の時効期間は5年間となっていました。

しかし民法の改正に合わせて、商法のこの規定も廃止されました。商事債権であっても一般債権と同じく「権利を行使できるときから10年(客観的起算点)または権利を行使できると知ったときから5年(主観的起算点)のいずれか早い方」が適用されます。

新人司法書士新人司法書士

5年になるか10年になるかはケースバイケースということですね。

司法書士の本松司法書士の本松

そうですね。ただ債務整理業務においては、5年の主観的起算点を採用することになります。金融機関が「権利行使できるとは知らなかった」という状態は有り得ないですからね。

損害賠償請求権の消滅時効について

損害賠償求権には、不法行為による損害賠償求権と、人の生命、身体の侵害による損害賠償求権があります。民法改正によりどちらについても消滅時効に変更点がありました。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

不法行為による損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から(主観的起算点)3年、または不法行為の時から20年の経過により消滅時効が完成します。これまでは不法行為の時から20年というのは除斥期間とされていましたが、改正民法では時効期間であるとはっきり明記されたのが大きな変更点です。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
引用元:民法第724条
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時効期間と除斥期間はどう違うんですか?

司法書士の本松司法書士の本松

時効期間と除斥期間の違いについてはわかりづらいですよね。よく把握できていない方も多いと思いますので、まとめてみました。特に大切なのは1と2なのでよく覚えておきましょう。

除斥期間と時効期間の違い
  1. 中断(更新)事由の有無 
    時効は中断(更新)するが、除斥期間は中断(更新)しない。但し、除斥期間にも停止(完成猶予)はある。
  2. 援用の必要性
    時効は援用することで効力が生じるが、除斥期間に援用は不要。
  3. 起算点
    時効期間の起算点には客観的起算点と主観的起算点があるが、除斥期間の起算点は客観的主観点(権利発生時)のみ。
  4. 遡及効
    時効の法律効果は遡及するが、除斥期間の効果は遡及しない。

生命・身体の侵害による損害賠償請求権

生命・身体の侵害に基づく損害賠償請求権は、契約に基づく損害賠償請求(業務上のケガなど)と、不法行為に基づく損害賠償請求(交通事故、ケンカによるケガなど)とに分けられます。改正前の民法では、契約に基づく請求権は10年、不法行為に基づく請求権は3年の時効期間が定められていました。

改正民法によりどちらも時効期間は5年間に統一されました。しかしこれは「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時(主観起算点)」の場合なので、「権利を行使することができる時(客観的起算点)」を採用する場合は、民法第167条の規定により20年間の消滅時効期間が適用されます。

(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
引用元:民法第742条の2
(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
第百六十七条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。
引用元:民法第167条

時効の援用権者

改正前の民法では、時効の援用権者について明確に記載された条文はありませんでした。しかし、改正後の民法では、時効の援用権者は「保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者」であると明記されました。

(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
引用元:民法第145条
新人司法書士新人司法書士

改正により時効の援用権者の範囲が変わったということですか?

司法書士の本松司法書士の本松

改正前から保証人等も時効の援用は可能だったので、事実上はそれほど大きな変更点はありません。しかし明文化されたことで分かりやすくなったと思います。

適用日付と経過措置における注意点

令和2年4月1日に法改正が施行されましたが、改正民法が適用されるのは施行後に発生した債権についてです。つまり令和2年4月1日以降の原契約に基づく債権については改正民法が適用されますが、令和2年3月31日までに締結された原契約に基づく債権については、経過措置としてこれまで通り改正前の民法が適用されます。

まとめ

以上、民法改正により大きく変わった消滅時効について記載しました。

今回のポイント

【民法改正による消滅時効の変更点】

  • 客観的起算点と主観的起算点
  • 商事消滅時効の廃止
  • 時効の援用権者
  • 適用日付と経過措置における注意点

司法書士の債務整理実務にとって消滅時効の知識はとても大切です。依頼者から寄せられる債務整理の相談の中でも、トップクラスに件数が多いです。改正民法の知識をしっかりと身に付けて実務で活かせるようにしましょう。

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