
こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。
今回の記事では、破産申立における債権者からの異議(意見申述)について説明します。
- 自己破産手続きでは、債権者が免責に対し異議を申し立てることができる「意見申述」という制度がある。
- 金融機関から異議が出されることはほとんどない。
- 一度も返済していないなどの事情があれば、債権者から異議が出されることもある。
自己破産の手続中に、債権者は「その自己破産、ちょっと待った!」と異議を申し立てることができます。この異議のことを「意見申述」と呼びます。

異議を申し立てられたらどうなるんだろう?免責が不許可になってしまうのですか?
と不安を感じるかもしれません。

安心してください。異議が出たからといって、それだけの理由で免責不許可になることはないでしょう。
最高裁判所の統計資料によると、平成23年の自己破産の申立件数10万7879件のうち、免責許可になった件数が10万5169件(97.4%)、免責不許可になった件数は174件(0.7%)となっています。ほとんどの場合異議は認められず免責許可を得ることができています。
しかしだからといって油断は禁物です。破産申立における異議について詳しく解説していきますので、参考にしてください。
破産申立の異議(意見申述)について
破産申立における異議とは、債権者が「この債務者には免責不許可事由があるので免責しないでください」という意見書を裁判所に出すことをいいます。「意見申述期間」といって債権者が「債務者の免責に異議を申し立てる期間」があります。この意見申述期間は破産手続開始から約2ヶ月で債権者は異議がある場合この期間に意見書を提出しないといけません。
意見書の内容としては、単に「破産者の免責を不許可にしてください」と記載するのではなく、「破産者は免責不許可事由に該当する行為をしています」というような具体的な内容を主張することになっています。

他にも「破産者はこのような財産を所有しているので換価できるはずです」というパターンもあります。
異議を出されることはほとんどない
債権者が裁判所に提出する意見書は「免責不許可事由」を指摘する内容でなければいけません。
(免責についての意見申述)第二百五十一条 裁判所は、免責許可の申立てがあったときは、破産手続開始の決定があった時以後、破産者につき免責許可の決定をすることの当否について、破産管財人及び破産債権者(第二百五十三条第一項各号に掲げる請求権を有する者を除く。次項、次条第三項及び第二百五十四条において同じ。)が裁判所に対し意見を述べることができる期間を定めなければならない。(免責許可の決定の要件等)第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由(免責不許可事由(※筆者注釈))のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。引用元:破産法第251条第1項、同第252条第1項
- お金を返してくれないと困る
- 必ずお金を返してくれると言ったのに嘘をつかれた
- お金を貸したから生活に困っている
など、個人的、感情的な内容では意見書を提出しても効果は期待できません。提出する意見書はあくまで免責不許可事由を指摘するものである必要があります。
なお、金融機関が免責に対する意見申述をすることはほとんどありません。

金融機関は「意見申述をしてもムダ」という合理的な判断をしますので、明らかに指摘できる事実がない限りは意見申述してくることはありません。
しかし、金融機関でも意見申述をしてくることはあります。過去に私が経験したケースを紹介します。
亡くなった夫の事業資金を連帯保証している妻の破産申立の件です。債権者である金融機関から「まだ相続登記は入っていないけれど、申立人が相続している不動産がある。売却すればその売却益で返済できるはずだ。」と主張してきました。
確かに亡夫には不動産を所有している弟がいました(弟に子はいません)。その弟が亡くなったのですが、亡くなったのは亡夫より後のため、申立人である妻には相続権がありません。その旨を裁判所に上申したところ、問題なく免責許可決定が出ました。

意見申述してきたことよりも、戸籍関係を調査すれば相続権がないことはすぐ分かるにも係わらず、その調査を怠って根拠のない主張をしてきたことが驚きでした。
絶対に自己破産が認められるということではない
免責不許可事由があったとしても、ほとんどの場合は裁判官の裁量免責により免責が認められます。もちろん絶対に認められるということはありません。程度の問題にもよりますが、免責不許可事由があれば自己破産の手続きは管財事件となることが多いので、破産管財人が裁判所に提出する意見書次第になってきます。

財産が少ない方でも免責に関する調査が必要だと裁判所が判断すると、同時廃止ではなく管財事件になります。
一度も返済していない場合は要注意
借金をして一度も返済していない場合も免責不許可事由に該当します。一度も返済していないということは「初めから借金を返すつもりがない」と考えられるため、債権者から異議が出される可能性も高まります。そのため一度も返済できなかった理由をしっかりと説明しないといけません。
裁判官は申立人の主張や債権者の意見も聞いた上で、総合的な見地から判断を下すことになっています。一度も返済できなかった事情につき合理的な理由がなければ、免責不許可になってしまうこともあるでしょう。ほとんど無いとは思われますが、最悪の場合、貸金業者から詐欺を理由に刑事告訴される、というリスクも存在します。
免責決定には即時抗告できる
不服がある債権者は、免責許可決定後2週間以内に「即時抗告」をすることができます。その場合は免責につき再審理されますが、高等裁判所で免責の許可の決定が覆る可能性はほとんどありません。
まとめ
破産申立はよほどのことがない限り、異議を出されても免責を得ることができます。しかし一度も借金を返済していない場合や、破産管財人に「免責不許可事由がある」という意見書を提出されると免責が不許可になる可能性が高まります。
- 自己破産手続きでは、債権者が免責に対し異議を申し立てることができる「意見申述」という制度がある。
- 金融機関から意見申述があり異議が出されるということはほとんどない。
- 一度も返済していないなどの事情があれば、債権者から異議が出されることもある。
「絶対に大丈夫」ということはありません。免責不許可事由がある場合は、事前にそのことを依頼者にも理解してもらい破産申立を進めていきましょう。
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