
こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。
この記事では、破産申立の際に裁判所に提出する家計収支表について解説します。ついつい軽視されがちな家計収支表ですが、実は破産申立における家計収支表は、「破産申立てに至った事情」と並び、破産申立時に作成する書類のうち最重要書類にあたります。

裁判所はお金の流れを最も重視します。家計収支表はそのための大切な資料になるため、破産申立書類提出後の裁判所からの照会時も家計収支表についてツッコミが入ることが多いです。
- 破産申立に必要な家計収支表とはこんな書類。
- 支払不能状態にあること、免責不許可事由の検証のために、破産申立に家計収支表が必要。
- 家計収支表は依頼者に書いてもらい、Excelで仕上げましょう。世帯全員分の記載が必要で収支をピッタリと合わせる必要がある。
- 家計収支表は正直に書こう。申立直前2カ月分が必要なので、申立3~4カ月前から準備しよう。
それでは以下に詳しく説明していきます。
家計収支表とは?
家計収支表とは破産申立時に裁判所に提出する書類のひとつで、申立人だけでなく「世帯全員分」の月単位の収支を記載した書類です。いわゆる家計簿に近いものですが、現金取引に限らず光熱費、保険料等の各種引落しから公租公課まですべて記載する必要があるため、一般的な家計簿に比べてとても詳細に記載しなければなりません。
破産申立時に作成する書類のうち、家計収支表は最も重要な書類のひとつです。裁判所にも念入りにチェックされますので、しっかり作成しましょう。
なぜ家計収支表が必要なのか?
ではなぜ破産申立に家計収支表が必要になるのか解説していきます 。
借金が返せないことの判断
自己破産が認められるには、自分の収入では借金を返済することができない「支払不能」という状態を証明しないといけません。その証明のために、世帯の収入や支出を記録して裁判所に報告する必要性があります。
免責不許可事由がないか
免責不許可事由があれば自己破産が認められない場合があります。そのため、裁判所は家計収支表で次の点を確認し、免責不許可事由に当てはまることがないか確認します。
- ギャンブルや浪費がないか
- 収入に見合わない出費がないか
- 交際費が過大ではないか
- 使途不明な支出や出所不明な収入がないか
しかし、免責不可事由があっても「裁量免責」といって裁判官の裁量で免責が認められることがあります。

免責不許可事由があったとしても裁判所や破産管財人の指示に従って報告や書類の提出をしていれば、免責許可決定が出ることがほとんどです。浪費やギャンブルが原因の場合は、反省文の提出を求められることもあります。
裁量免責を得るために、生活の質を改善し自立して生活できること証明する必要があります。そのため免責不許可事由がある依頼者には生活改善の必要があることを説明しましょう。
家計収支表の書き方
家計収支表(※東京地裁vers。クリックすると拡大します。)
では具体的に家計収支表の書き方について説明していきます。破産申立の家計収支表の書式は裁判所によって様々です。事前に裁判所に確認すべきですが、東京・大阪等の大都市以外の裁判所では「どの書式でもいいですよ」と言ってくれるところも多いです。

裁判所によって名称は様々ですが、担当部署は「破産再生係」で通じます。管轄地裁に電話して「破産申立について聞きたいので、破産再生係のご担当者お願いします」と言えば担当の書記官、事務官に繋がります。割と丁寧に教えてくれますので、わからないことはどんどん電話して確認しましょう。
家計収支表はまずは依頼者に書いてもらう
破産申立における家計収支表は、まずは依頼者に書いてもらいます。

明細やレシート類をすべて事務所に持ってきてもらって、その場で話を聞きながら作成したこともありました。しかし時間と手間のコストが膨大にかかるのでオススメしません。
依頼者本人に書いてもらったものを送ってもらい、司法書士が申立用に整えます。PCが使える依頼者であれば、手書きではなくExcelで入力して送ってもらった方が後の処理が楽ですよ。
家計収支表はExcelで作成しよう
各地の裁判所のサイトや司法書士会の会員用サイトで家計収支表はダウンロードできます。それをそのまま使えばいいのですが、中にはWordやPDFファイルしかないサイトもあります。家計収支表は細かい数字の入力、訂正を何度も行います。計算式が入るのでWordだとメチャクチャやりにくいですし、PDFだとそもそも手書きになってしまいます。
Excel形式でダウンロードできれば良いのですがWordやPDFしかない場合は、手間ですがExcelの書式を自分で用意しましょう。一度書式を作成しておくと次回以降も使えますので、結果的に作業時間の節約につながります。
収支が必ず合うように
家計収支表の収入欄の「収入合計」と支出欄の「支出合計」は、必ず金額が一致します。そのため金額が一致していない家計収支表はどこかに必ず金額の誤りがありますので、依頼者に確認しましょう。

正確に記載すれば必ず収支の金額はピッタリと一致するはずです。しかし私の経験上、これまで収支の金額が一致する家計収支表を書いてくれた依頼者は0人です。そのまま提出してしまうと裁判所から指摘を受けますので、金額を一致させるよう調整作業が必要になります。
依頼者から提出を受けた家計収支表は金額が合わない。一方裁判所には金額がピッタリ合った家計収支表を提出しないといけない。司法書士はどうすべきでしょうか?
金額が合わない原因は次の3つが考えられます。
- 記載漏れ
- そもそもいい加減に書いている
- 隠している支出がある(ギャンブルなど)
3は論外ですが、しっかり報告しないと免責許可決定が出ない旨を依頼者に説明して金額を聞き出しましょう。1と2については、これを防ぐことは私は不可能だと思っています。しっかりした依頼者であってもコンビニで買った100円程度のお茶代、移動で使った200円程度の電車代など、どうしても漏れてしまうものはあります。
そこで私は依頼者に家計収支表の説明をするときに次のように説明しています。
スーパー、コンビニ、ドラッグストアなど食費、日用品についてはできる限りでいいので、家計収支表に反映させてください。但し光熱費、携帯電話代、税金、保険料など毎月支払いがあるものは、必ず明細や領収書を保管してください。司法書士の本松
光熱費等は裁判所に領収書を提出するので、金額に相違があると必ず指摘されます。しかし、食費・日用品については裁判所からレシートの提出を求められるわけではないので、多少の相違があっても問題はありません。そのため依頼者から受け取った家計収支表の金額が合わない場合は、食費・日用品費で金額を調整して収支を合わせるというのが、実務上の取り扱いです。
もちろんその前にしっかりと聞取りを行い漏れがないか等を確認することが第一ですが、最終的には食費・日用品費で微調整することになります。
家計収支表は世帯全員分の収支の記載が必要
家計収支表は申立人だけでなく世帯全員の収支の記載が必要です。配偶者、同居人、子も全て含まれますので、家族がいる方は必ず協力してもらいましょう。
家計収支表の注意点
家計収支表を書くにあたって注意したい点、やってはいけない点があります。
嘘を書かず正直に
ギャンブルや浪費などにお金を使ってしまって、バレないようにと家計収支表に嘘の金額を書いてしまう依頼者もいます。裁判所に対して嘘をつくと裁量免責を得る可能性が低くなりますので、注意が必要です。仮にギャンブルなどを行ったとしても、全て正直に記入し裁判所に申し出ましょう。

「言いにくいことや言いたくないことがあるかも知れません。しかし私に対しては包み隠さず正直にお話ください。その上で、裁判所にどこまでどのように報告するかは、考えさせてください。」と説明しています。同じ報告をするにしても文章表現でニュアンスが異なってきます。免責不許可事由に該当しそうな事情があるのであれば、虚偽の説明にならず、なおかつなるべく心象を悪くしない文書作成を心掛けましょう。
破産申立における家計収支表は、提出する書類の中でも最重要書類の一つです。しっかりと気を配って作成しましょう。
前もって準備しよう
破産申立における家計収支表は、申立直前の2カ月分を提出します。10月に申立てを行うのであれば直前の2カ月分(8月、9月分)の提出が必要です。そのため、依頼者とまずは申立月を先に決めておき、その3~4カ月前から家計収支表作成の準備に入ってもらいましょう。

家計収支表の作成が間に合わずに申立月が後ろ倒しになることはよくあります。そのままズルズルいかないように、しつこいくらいに何度も依頼者に進み具合を確認した方がいいですよ。
家計収支表に記載されている金額の疎明資料として、裁判所には給与明細、年金通知書、光熱費・携帯電話代の領収書などのコピーを提出します。コピーを取る手間や、裁判所が確認しやすいコピーの取り方もあるので、私はすべて原本をお預かりするようにしています。そのため、依頼者からこれらを預かるのですが、几帳面な方ほど「給与明細は給与明細」「電気代は電気代」と項目別にまとめて提出してくれます。
しかし、家計収支表の作成にあたっては、このまとめ方は実はやりづらいんです。
家計収支表は月単位で作成します。そのため月単位で書類が分かれている方が、司法書士としてはやりやすいです。そのため依頼者には項目別ではなく、月別に明細をまとめておくよう伝えるといいでしょう。
まとめ
以上、破産申立ての家計収支表について解説しました。
- 破産申立に必要な家計収支表とはこんな書類。
- 支払不能状態にあること、免責不許可事由の検証のために、破産申立に家計収支表が必要。
- 家計収支表は依頼者に書いてもらい、Excelで仕上げましょう。世帯全員分の記載が必要で収支をピッタリと合わせる必要がある。
- 家計収支表は正直に書く。申立直前2カ月分が必要なので、申立3~4カ月前から準備しましょう。
家計収支表は破産申立においてとても重要な書類です。また、他の書類をすぐに用意できたとしても1ヶ月前の支出は記録がない限り家計収支表を作ることができません。作成に日数を要する書類なので、依頼者に対し進捗確認を念入りに行いましょう。

ルーズな依頼者に対しては特に念入りに確認しましょう。早めに破産申立を行うことが結果的に依頼者の利益に繋がることを忘れないように。
免責許可決定を取るためには正直に報告することが大切です。そのため家計収支表も正確に作成する必要があります。受任から申立までは少なくとも数か月はかかりますので、その間に積極的にコミュニケーションをとって信頼を築きましょう。信頼が築けていれば依頼者も正直に報告してくれるはずです。
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