
こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。
この記事では、自己破産したら配偶者の通帳はどうなるのかについて、影響が及ぶ3つのパターンを紹介します。

配偶者の通帳にも影響が及ぶとしたら依頼者にしっかりと説明しておかないといけないな。でもどんな場合に影響が及ぶんだろう?
破産手続きを検討されている方で、配偶者への影響について不安を抱えている人は多いです。結論から言いますと、原則的には自己破産をしても配偶者の通帳預金は破産手続き(換価手続き)の対象になりません。

裁判所に提出するか否かは別にしても配偶者の協力が得られるのであれば、司法書士は自己破産申立前に配偶者の通帳をできる限り確認しておくのが望ましいでしょう。裁判所はお金の流れを最も厳しくチェックします。司法書士はその流れを自己破産申立前につかんでおくことが大切です。
しかしあくまでも原則論ですので、配偶者の預貯金が破産手続きの対象になる場合もあります。
今回は、自己破産をした場合の配偶者の通帳への影響について解説していきます。
配偶者の通帳に影響するパターン1 預貯金の名義と出損者が異なる
預貯金の口座名義は配偶者だとしても、出損者(お金を出した人)が破産者である場合は、破産者の財産として認定され、破産手続きの対象となると考えるべきです。また、配偶者の財産と認めた場合でも、否認権行使の対象になる可能性もあります。
配偶者の通帳に影響するパターン2 自己破産前に預金を移動した
支払不能となってしまった時期以降(自己破産申立前1年以内がひとつの基準になります)に、破産者の通帳から多額の資金を配偶者名義の通帳に移したことが確認された場合、名義に関わらず破産者の財産と判断され、破産手続きの対象となりますので注意が必要です。

自己破産の申立てにおいて免責許可決定を獲得するには、事実をありのままに報告することが最も重要です。もし資金の移動があったのなら、その旨をそのまま上申すべきです。
原則「名義」による判断ですが、明らかに破産対象から隠すために名義を変えているなど悪質なケースは、最悪免責が認められない可能性もあります。
配偶者の通帳に影響するパターン3 保険料が配偶者の口座から引き落とされている
破産者名義の保険契約にも係わらず、保険料の支払いが配偶者の口座から引落されている場合があります。この場合は通帳の写しを裁判所に提出して事情を説明すべきでしょう。
この場合、配偶者の通帳の取り扱いにつき次の2つの可能性が考えられます。
- 保険料の負担分につき配偶者から破産者への贈与と考える
- 名義は配偶者だけれども事実上破産者の財産と考える
通帳を管理しているのが配偶者で、その通帳は保険料の支払い以外にも使用しているのであれば1と考えられますが、破産者が管理していて保険料の支払いのみに使用しているなら、事実上破産者の財産であると判断され、破産手続きの対象となると考えられます。
自己破産しても配偶者の通帳預金は原則破産対象ではない
原則として、申立人(破産者)が自己破産しても配偶者の通帳に入っている預貯金が破産手続きの対象になることはありません。家族ではありますが、法的には別人格のためです。 原則として裁判所では預貯金は口座の「名義」にて判断されますが、配偶者名義の預貯金が実質的に破産者の財産である判断されると、破産手続きの対象となるケースがあります。
預貯金額が20万円未満の場合は破産手続きの対象にならない
預貯金額が20万円未満の預貯金は、破産者本人の預貯金であっても破産手続きの換価対象になりません。
他に20万円を超える財産が何もない場合は、同時廃止事件として扱われ破産手続きも開始と同時に終了となります。
調査のために配偶者の通帳の提出を求められる可能性はある
自己破産では、申立て直前の2カ月分の同居家族を含む世帯全体の家計収支表を裁判所に提出する必要があります。そのため、生活資金の支払いを破産者の配偶者の通帳で賄っている場合は、配偶者の預金通帳のコピー提出を求められる可能性があります。

裁判所に申立てる前に司法書士がお金の流れをつかまないといけません。依頼者にしつこいくらい確認して、自分の頭の中でお金の流れを整理しましょう。申立てを数件こなしてくるとチェックすべきポイントも意識できるようになります。それほど難しいことではないので安心してください。
自己破産は原則口座名義だけで処分対象を判断する
破産手続開始決定時に一定以上の財産がある場合は、管財事件となり裁判所によって破産管財人が選任されます。
破産管財人が財産の調査・管理・処分し各債権者の債権額に応じて配当されるのですが、あくまでも処分し、配当されるのは破産者の財産です。破産者だけの財産が処分され、配偶者の財産が処分されることはありません。
しかし例外もあり、次のような場合は破産者が借金をして家族にお金を流し、意図的に自己破産で免責を受けるというお金の流れとして判断され、家族で所有している財産が責任財産となり破産手続きの対象となる可能性があります。
- 共働き夫婦だが破産者の収入のみで生活しているケース
- 破産者が原資を負担した子ども名義の学資保険があるケース
- 破産者の借入金を他の家族に渡すことで世帯全体の預貯金が増えているケース
財産隠しが発覚すると免責不許可事由となる
手元に資金を残したいがために不正に財産隠しを行う人がいますが、免責不許可事由に該当しますのでやめておいた方が良いでしょう。 また、破産後に財産隠しが発覚しても詐欺破産罪に問われ、「10年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」される可能性がありますので、適切な申告を必ず行うようにしてください。

このような事態を回避すべく、お金の流れをつかむために自己破産申立前に配偶者の通帳をできる限り司法書士がチェックすることが大切です。
まとめ
自己破産をしたら配偶者の通帳はどうなるのかについて、影響が及ぶ3つのパターンを紹介しました。
- 預貯金の名義と出損者が異なる
- 自己破産前に預金を移動した
- 保険料が配偶者の口座から引き落とされている
原則的には、自己破産しても破産者の口座名義だけで判断され、配偶者の通帳預金には原則破産対象にはなりません。しかし上記の場合には配偶者の通帳も対象となる可能性が高くなりますので、注意が必要です。

裁判所はお金の流れを最も厳しくチェックします。司法書士は自己破産申立前にその流れをつかんでおき、裁判所からの照会に対応できるよう準備しておくことが大切です。
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