
こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。
今回は、司法書士事務所開業までのステップや準備することをまとめてみました。

そろそろ独立したいけど、何を準備したらいいですか?開業の手続きって難しそう。

なお、独立開業して最初に力を入れるべきは”債務整理業業務”です。

え?開業したらまずは不動産登記じゃないんですか?
こう思った司法書士の方も多いと思います。しかし、特に開業当初は債務整理業務に力を入れた方がはるかに効率的なのです。その点も踏まえて以下に詳しく書いていきますので、ぜひ参考にしてください。
司法書士事務所の開業 事前準備
司法書士事務所の開業を考え始めたら、事務所所在地や事務所名、必要資金について計画を立てましょう。
事務所の所在地・屋号を考える
まずは、事務所の場所と屋号(事務所名)を決めましょう。自宅開業にするのか、賃貸オフィスにするのかで、必要資金に大きな差が出てきます。自宅兼事務所から始めて、様子をみて、オフィスを借りる方もいらっしゃいます。
屋号も悩みますよね。長く付き合う名前なので、じっくり考えて納得の行く屋号を考えましょう。

どのような事務所にしたいかによって、屋号も決まると思います。私は最初から債務整理や相続を中心に考えていたので、リテラシーが低い相談者でもわかりやすいように「ひまわり」という名前を付けました。わかりやすい名前なので「ひまわりさん」と呼んでもらうことも多いです。
必要資金を考えよう
必要資金について考えましょう。特に事務所家賃は開業をする際に大きなポイントになりますので、慎重に検討すべきでしょう。

オフィステナントの初期資金(保証金、礼金等)の相場は家賃の1年分が相場と言われています。しかも内装を自己負担で行ういわゆる「スケルトン」物件だと内装費用が数百万円はかかってしまいます。
賃貸オフィスの場合は、しっかり事業計画を作成することをオススメします。

最初は自宅開業をオススメします。立派な事務所を構えることに憧れる気持ちは分かります。カッコいいですし、まだ独立していない同期にも自慢できますよね。でも資金を圧迫するのもまた事実です。実際私も開業して最初の2年くらいは自宅を事務所にしていました。
融資を受けることを考えたら、日本政策金融公庫の創業融資制度があります。地方銀行でも、創業・新規事業をおこなう事業主を対象に、融資をおこなっています。お金を借りられる=信用力があるということです。実力の一つです。本気でビジネスを始めるなら、創業時の資金調達も視野に入れましょう。
事業計画はそこそこに

事業計画を考えないとな。でもどうやったらいいの?
司法書士事務所を開業しようと思っていると、このように考えたことはないですか?しかし安心してください。司法書士事務所の開業においては、ひとまず事業計画は不要です。 そもそも融資を利用しないのであれば事業計画作成は必要ありません。もし融資を利用するとしても金融機関の担当者が事業計画の書式や書き方を提供してくれるので、教えてもらいながら作成した方が効率的です。
「しっかりした事業計画を作らないと、経営が行き詰まる可能性が高くなるのでは?」と心配になる方もいるでしょう。その気持ちはよくわかります。私も開業前は同じ気持ちでした。
経営理念も大切です
司法書士事務所の開業において実は大切なのが経営理念です。経営理念がないと、経営判断に迷ったときの方向性を見失ってしまいます。 決してキレイな理念でなくても構いません。多くの人は「たくさん儲けたい!」と考えるでしょう。でも儲けて何をしたいのか、という点が大切です。

私は司法書士事務所を開業して、自由になりたかったです。自分の責任において自分で判断して自由に仕事をしたいという思いを抱いていました。債務整理業務は不動産登記業務に比べて時間を自由に使えますので、いろいろやることが多くて慌ただしい開業初期は債務整理業務を中心に考えましょう。
経営理念を定めておくと、初心を忘れたときに気づくことはたくさんあります。
司法書士事務所の開業 ステップ1 事務所所在地・電話番号・FAX番号を取得する
それではここから具体的な司法書士事務所の開業手続きについて説明していきます。 事前準備を経て事務所所在地(自宅可)を決めた上で、まずは電話番号とFAX番号を取得します。
開業後の司法書士実務でも使用するのはもちろんのこと、その後の税務署や司法書士会登録の手続きでも使用するので、事前に番号を取得しておく必要があります。メールドレスも用意しておいた方がいいでしょう。
司法書士事務所の開業 ステップ2 税務署の手続き
司法書士事務所の開業に、最低限必要な提出書類は下記の2つです。記入して、所轄の税務署に提出しましょう。どちらの書類も国税庁のホームページからダウンロードできます。 管轄の税務署に原本と控えを提出します。持参、郵送どちらでも可能です。持参の場合は、印鑑(訂正印のため)を忘れずに持っていきましょう。郵送の場合は、提出用と控え用を入れ、忘れずに返信用封筒(切手付き)を同封しましょう。

提出書類の控えは口座開設等で必要になりますので、失くさないようにしてください。
個人事業主の開業届出・廃業届出
司法書士事務所を開業する際に、最低限必要となる記入の仕方を説明します。所長一人の個人事務所開業では、以下の部分の記入で、問題ないと思います。
①提出先 納税地を所轄する税務署へ提出します。税務署の管轄は国税庁のホームページから検索できます。
②提出日 提出日は開業日から1ヶ月以内です。
③納税地 「住所地」、「居住地」、「事務所等」から納税地を選択し、所在地を記載してください。自宅事務所の方は住所地を選択してください。 自宅と別に事務所がある方は、住所地または事務所等を選択します。電話番号も記入します。
④氏名、生年月日 氏名、生年月日を記入し、印鑑を押します。認印で問題ありません。
⑤個人番号 マイナンバーを記入します。
⑥職業 職業を記入します。「司法書士」と記入しましょう。
⑦屋号 事務所名を記入しましょう。
⑧届出の区分 開業に〇をつけます。
⑨所得の種類 司法書士業は「事業所得」を選択します。
⑩開業・廃業日 開業日を記入します。 特に厳しいルールはありませんので、おおまかな日付を記入して問題ありません。
⑪開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 ここでは、青色承認申告書はこの開業届出と同時申請をすることを前提にしています。「青色申告承認申請書」は「有」を選択します。 消費税に関する「課税事業者選択届出書」は「無」を選択します。 開業当初は免税事業者です。
⑫事業の概要 「司法書士業」で問題ないです。詳しく書きたいのであれば「司法書士として相談業務、登記申請業務、その他付随する業務」程度でよいと思います。
所得税の青色申告承認申請書
申請は任意ですが、節税効果が高いので、開業届と同時に提出しましょう。国税庁のホームページからダウンロードできます。 管轄の税務署に原本と控えを提出します。 持参、郵送どちらでも可能です。持参の場合は、印鑑(訂正印のため)を忘れずに持っていきましょう。郵送の場合は、提出用と控え用を入れ、忘れずに返信用封筒(切手付き)を同封しましょう。
- 「所得-最大65万円」が控除され、納税額を少なくできます。
- 赤字でも翌年以降3年間繰り越すことが可能。黒字になった年に相殺でき所得を少なくすることができます。
①税務署・記入日・右上枠内 開業届と同様に記入します。

開業当初から税理士と顧問契約を結び、書類の作成をお願いするという選択肢もあります。予算と相談して決めましょう。
その他必要な手続き
以下の書類は基本的に提出の必要はありませんが、該当する人は参考にしてください。
青色専従者給与に関する届出書
青色申告では、家族に支払う給与を全額経費にすることができます。司法書士事務所では、家族を補助者として登録するケースがあると思います。節税対策にはなりますが、デメリットもありますので、じっくり考慮してから提出しましょう。
①事業主と生計を一にする配偶者・その他親族 配偶者を専従者として届け出ると給与額にかかわらず扶養から外れ、「配偶者控除」をうけることができません。支払う給与が月3万円程度なら、配偶者控除を受ける方がお得です。
所得税の減価償却資産の償却方法届出書
減価償却資産の償却方法は「定率法」と「定額法」があります。個人事業主は原則定額法となっていますが、この届出書を提出することで「定率法」を選ぶことができます。

社用車等の減価償却資産を購入する予定があるなら検討してください。
定額法は年定額の減価償却費を計上していきます。定率法は、資産を取得した年度に原価償却費を多く計上でき、毎年計上額が少なくなります。開業時の初年度に税負担を少なくできるメリットがあります。どちらを選んでも、減価償却費総額は変わりません。
司法書士事務所の開業 ステップ3 司法書士会登録・入会
司法書士会に登録・入会の手続きをしましょう。手続きの流れを説明します。
必要書類提出
登録申請書には事務所所在地、電話番号、FAXを記入します。事前に事務所を決め、電話番号、FAX番号を取得しておきましょう。 職印の登録も必要となりますので、こちらも事前に作成しておきましょう。
(提出書類等) 以下の書類を所属する司法書士会事務局で入手して、記入しましょう。
- 登録申請書
- 司法書士名簿
- 誓約書
- 入会届
- 履歴書
- 職印届出書・印鑑紙
(添付書面)
- 司法書士試験合格証書
- 認定証書(簡裁代理権)
- 顔写真
- 本籍の記載のある住民票の写し(または本籍地の記載がない住民票の写し及び戸籍抄本)
- 身分証明書(市区町村役場で取得できます)
- 登記されていないことの証明書(各地の(地方)法務局本局または郵送請求(東京法務局)で入手します)
- 収入印紙3万円
- 入会金など※入会金と月会費は所属する司法書士会によって異なります。詳しくは各会に確認してください。
司法書士会の役員面談、日本司法書士会連合会の登録審査
普通に対応すれば大丈夫です。ほとんどの場合、問題なく登録されます。不安な方は司法書士会に「どんなことを聞かれますか?」と事前に問い合わせると、質問事項を少し教えてくれる場合もありますよ。

司法書士会によって違いはありますが、役員面談や登録審査は月に1回程度しか行われません。登録を急ぎたい場合は、司法書士会に早めにスケジュールを確認しておきましょう。
登録証の交付
おめでとうございます!司法書士として業務を行うことができます。
司法書士事務所の開業 ステップ4 銀行口座の開設
司法書士事務所の開業の次なるステップは、事業用の口座開設です。事業用とプライベートのお金を区別することが大切なので、個人名義の口座とは別に屋号名義の口座を開設します。個人事業主では、「事業主本名」または「屋号(事務所名)+事業主本名」での開設となります。

私は開業当時(法人化前)は「ひまわり法務司法書士事務所」という屋号だったので、口座名義は「ひまわり法務司法書士事務所 本松紳司」でした。
個人名義の口座でも業務は可能ですが、事務所名付きの口座開設の方が信頼度アップとなりオススメです。取引迅速化のため、インターネットバンキングの登録も忘れずにおこないましょう。 口座開設は銀行によって異なりますが、以下のような書類の提出を求められます。詳しくは、口座開設をする銀行のホームページで確認してください。
- 本人確認書類
- 個人事業主の確認書類 個人事業開業届出書の控えなど
- 事業内容が確認できる書類 会社のホームページアドレス、会社案内・パンフレットなど。
司法書士の本松
司法書士の場合はこれらに代えて司法書士登録証や司法書士試験の合格証書の提出を求められることが多いと思います。私もそうでした。
- 届出印 専用の銀行印を作成しても良いですし、個人の印鑑でも職印でも問題ありません。

なお、事業用口座は2口座作成してください。1つは業務の売上を管理する通常の業務用口座。もう1つはいわゆる「預かり口」口座です。
例えば私の事務所の場合、破産申立てなどで費用を分割払いにした依頼者は、分割金を預かり口口座に振り込んでもらいます。それまではあくまで「預かり金(会計処理上は「仮受金」と呼ばれます)」として預かり、手続終了段階で精算処理を行い、その時点で初めて売上として計上するという会計処理を行っています。
独立して最初に取り組むべきは債務整理業務
いよいよ事業を行う準備が整いました。司法書士事務所の開業ですね。
まずは債務整理業務から始めましょう。
開業してすぐに登記案件獲得のために不動産会社に挨拶営業に回る人が多いと思います。しかしこれはとても効率が悪い方法です。不動産会社にはほぼ100%の確立で付き合いのある司法書士事務所が複数ありますよね。そこにいきなり割って入るのはとても難しいです。
不動産登記だと同業の司法書士と不動産会社等の顧客の奪い合いになってしまいますので、ギャンブル的要素が強すぎます。さらに突然、取引を切られてしまう可能性もあります。不動産登記をやりたいのであれば、債務整理業務で事務所経営の基盤を作ってから動き出した方がはるかに効率的です。
不動産決済の案件は不動産会社からの「案件紹介」で成立するビジネスモデルです。B to B to Cと呼ばれるモデルになります。 そのため自分で案件を発生させる権限がなく、不動産会社の匙加減ひとつで仕事量が上下してしまう大きな構造的リスクを抱えています。
一方、債務整理業務は広告を回して集客します。シーズンによって違いはありますが(冬場は件数が多くて夏場は少ない等)、広告費の調整で大まかな件数予測はできます。 そのため自分の裁量で仕事量をコントロールできるところが最大のメリットです。 このようなビジネスモデルはB to Cと呼ばれます。エンドユーザーに直接セールスできるのが最大の特徴です。

それ以外にも債務整理業務に取り組むべき理由はあります。実は債務整理業務をやっていると、不動産会社との繋がりが獲得できるのです。
債務整理業務を行っていると破産案件も出てきます。そうすると住宅ローンを抱えながら破産する依頼者も一定割合存在します。その場合、まずは任意売却を進めることが多いので不動産会社の協力が必要なのです。
つまり、不動産会社に売却案件を紹介できるので、そこから不動産会社との繋がりが発生し、その後の継続的な決済の発注も期待できるのです。 開業したてで不動産会社から仕事を獲得するのは難しいと前述しましたが、それは何も「お土産」を持たずに営業に回った場合の話です。
「任意売却というお土産」を持って営業に回ることで、司法書士と不動産会社にとってwin-winの関係が生まれます。すると結果的にその後の不動産決済案件も依頼してもらえるポジションを獲得できるのです。
このように債務整理業務に取り組んでいると、何と不動産決済案件も獲得できるようになるのです。その意味からも私は債務整理業務をオススメしているのです。
まとめ
以上、司法書士事務所を開業する流れについて説明しました。
- 事務所所在地、屋号、電話番号、FAX番号を決める
- 税務署で開業届、青色申告の申請を行う
- 司法書士会に登録する
- 事業用預金口座を2つ開設する
- 債務整理業務を始める
開業して真っ先に債務整理業務に取り組むことで、自然と不動産会社との付き合いも生じてきます。不動産決済案件を最初から獲得するのは難しいですが、債務整理業務経由だと簡単に獲得できるものですよ。

私は地元でも何でもない場所で、何のコネもなく独立したのですが、この手順を踏んだことで順調なスタートを切ることができました。コミュニケーションが苦手な私にすらできたことなので、誰でも同じ手順を踏めば誰でもうまくやれます。
「司法書士事務所 債務整理研究会」のお知らせ

不安な司法書士の方は本松へぜひご相談ください。
「個人再生?何だそれ?聞いたことないぞ。」
というレベルだったのです。そんな私でも何とかやっていくうちに5032件の債務整理案件を処理できるにまで成長したのです。 このサイトをご覧になっている司法書士のあなたは、当時の私より間違いなく知識があります。だから断言します。
あなたでも、債務整理案件は自信を持ってすぐにできるようになる!
しかし、私のように回り道せずに、なるべく効率的に学習して欲しいと思い、このように情報発信をしております。時間は有限です。限られた時間をなるべく有効的に使うことで、結果的にあなたの司法書士としてのステップアップや事務所経営の安定にも繋がるのです。
これまで積極的に債務整理業務に取り組んで来なかった司法書士でも0から債務整理を学べる研究会です。共に学ぶ司法書士の仲間たちとの情報交換も可能なので、興味のある司法書士の方はぜひご参加ください。
皆様のご参加をお待ちしております。