
こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。
時効援用をしようと思っても貸金業者や債権回収会社から、時効を否定する情報を開示されることがあります。貸金業者から時効の中断事由の主張があり、時効援用ができなくなってしまうケースです。

貸金業者から中断事由を主張されてしまうと、その後の対応が難しくなりますね。

そうとも限りませんよ。中断事由があれば逆にビジネスチャンスにもなります。なぜなら自己破産、任意整理など他の債務整理手続きの依頼を獲得できるからです。時効が整理しなかった場合でも司法書士が力になれることを、相談者に必ず伝えましょう。
いったい貸金業者からどのような中断事由があるのでしょうか?今回は、司法書士実務上で、貸金業者等が主張する時効中断事由トップ3を発表します!相談の際に確認するポイントにもなりますので、参考にしてください。
時効中断事由 第3位(家族等による)弁済
家族や身内が、本人に代わって、借金を返済してしまうことがあります。 たとえば、本人(債務者)が不在のときに、貸金業者等が自宅を訪問し、家族や身内(第三者)が代わりに返済してしまったら、時効は中断するのでしょうか。
債務者の知らないところで家族等が返済をしても、基本的には借金の時効は中断しないと考えられます。 このようなケースでは、時効援用ができる可能性がまだ残っています。

その場合の弁済は「非債弁済(債務の不存在を知ってした弁済)」にあたると考えられます。もし、債務者以外(保証人でもない)による弁済が時効援用成立の争点になった場合は、非債弁済の主張をして債務の承認にあたらないと主張すべきでしょう。
(債務の不存在を知ってした弁済)第七百五条 債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。引用元:民法第705条
注意が必要なのは、本人が払っていなくても、家族等が本人のカード、本人宛の払込伝票、本人宛の督促状など使用して払ってしまうことです。帳簿上は単なる弁済となり、本人の弁済ではないことの証明が難しいので、時効援用は厳しくなります。

法廷で「本人の弁済ではない」と争うことはなかなか大変だと思います。債務額がある程度大きく、他の債務もある場合は、債務すべてを合わせて自己破産を選択した方が依頼者の負担が少ない場合も多いはずです。
時効中断事由 第2位 債務の承認
貸金業者等から中断事由として債務承認を主張され、時効援用ができないことがあります。債務の承認とは、主に「一部弁済」、「支払猶予願い」のことです。
一部弁済
一部弁済は、債務者が借金の一部を返済することです。借金の利息だけ、借金総額のうち少額だけでも返済すると、時効は中断します。100万円の借金のうち1000円だけ返済しても債務の承認となります。

貸金業者等は一部弁済になることを狙って「今月は5000円だけでもいいので、ご入金ください」と書面を送ってくる場合もあります。支払ってしまうと債務の承認と見なされ時効援用は難しくなりますので、相談者に対して注意喚起が必要です。
支払猶予願い
支払猶予願いは、債務者が貸金業者等に返済の延期をお願いすることです。督促の電話などで、

今月は支払いが難しいから、ちょっと待ってくれませんか?

ボーナスが入ったら払います
などのちょっとした発言が債務の承認と取られてしまいます。 「確かに借りています。」と明確な発言をしなくても債務の承認となってしまいますので、注意が必要です。
貸金業者等は通話記録を残しています。通話を録音している貸金業者等も多いです。これ以外にも、借金の減額交渉をした、和解書・示談書などに記入して返送をした場合も、債務の承認となり、時効の援用は難しくなります。

相談者が債権者と電話でやり取りする際に、何を話してもOKで何を話したらNGかという判断は難しいですね。

そのため私は「とにかく何も話さないように。貸金業者等からの着信も一切無視してください。もし電話に出てしまったら何も発言せずに電話を切るように。」と相談者には念を押しています。
また、時効が完成していても、債務者がそのことを知らずに、債務承認をしてしまうことがあります。この場合、貸金業者等は、債務者はもはや時効の援用をしないだろう、と期待するため、信義則上、時効援用が難しくなります。
時効中断事由 第1位 債務名義
貸金業者が主張する時効中断事由として、もっとも多いのが債務名義です。
債務名義とは、債務者の財産差し押さえができる権利のことで、代表的なのは仮執行宣言付支払督促と確定判決です。

私は面談の際に「裁判所から書類は届きましたか?」と依頼者に必ず確認します。しかし本人に裁判所からの書類が届いた記憶がなくても、気づかないうちに債務名義を取得されていることもあります。本人ではなく家族が書類を受取っていたり、付郵便による送達や公示送達により訴訟をされていたケースです。引越しが多く旧住所宛に特別送達が届いていたという可能性も考えられます。
実務では、相談者が持参した書類や取寄せた取引履歴から訴訟の有無の記載を確認し、債権者に直接問合せをするなどして調査を行います。
受任通知後の貸金業者等と最初にやり取りでは、「時効援用予定です」とはっきり明言して貸金業者等の交渉記録にその旨残させることが大切です。
(判決で確定した権利の消滅時効)第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。引用元:民法第169条
貸金業者等に中断事由を主張されたら?
貸金業者等から、債務承認や債務名義の中断事由を主張されても、時効が援用できる可能性はゼロではありません。債権調査できちんと確認しましょう。時効になっていれば、時効援用手続きを行います。時効援用通知書を配達証明付きの内容証明で、債権者に差出しましょう。
時効援用が無理なら他の債務整理方法に切り替えよう
消滅時効が完成していなければ、その他の債務整理手続き(任意整理、個人再生、自己破産)によって借金解決をはかることとなります。どの債務整理手続きが最適なのか、相談者にもっとも適切な方法を考えていきましょう。

時効援用ができないのであれば債務整理の手続きを行い、最後まで依頼者の力になるべきです。時効援用を打ち出している行政書士も多いですが、行政書士には債務整理業務ができません。司法書士としての差別化を生かす大きな強みになります。
利息・遅延損害金が大きくなっているはず
債務名義を主張され消滅時効が完成していない場合は、判決から数年間の年数が経過していることが多く、利息・遅延損害金もかなり多額になっているのが一般的です。遅延損害金が加算されると、借金は一気に膨れ上がります。
【遅延損害金の計算式】遅延損害金=借入額×利率÷365日×滞納日数
自己破産に優先順位を置いて債務整理方法を検討しよう
上記のとおり、数年放置するだけで債務額が2倍に膨れ上がることは珍しくありません。長年放置した債務なので、任意整理を試みたとしても貸金業者等の譲歩を引き出すのは難しく、損害金の減額交渉は厳しいでしょう。

その場合は無理に返済を考えるのではなく、自己破産を有力な選択肢として考えるべきです。依頼者にとっても弁済義務が消滅した方が、その後の生活が楽になります。
まとめ
以上、貸金業者等が時効の中断事由を主張するランキングを発表しました。
- 第1位 債務名義
- 第2位 債務の承認
- 第3位 (家族等)の弁済
貸金業者等は中断事由となるべく様々な手段で時効援用を妨げてきます。確実に時効中断事由となる裁判手続きなどの中断措置をとっていることが多く、注意が必要です。

中断事由があり時効援用ができないときは、その他の債務整理手続きによって相談者の借金問題を解決できることを伝えておくことが大切です。依頼者の救済になりますし、司法書士事務所の売上にもつながりwin-winの結果になるからです。
相談時に時効援用の可能性があっても、調査をすると、貸金業者等から時効を否定されることがあります。実際に業務を受任した後でしか見えてこない事実があります。
相談の際には、時効援用の見通しや可能性については言及しても、時効援用ができることを断言するのは避けましょう。
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