個人再生を行うと どれくらい債務が圧縮できるのか? 清算価値保障と可処分所得についても徹底解説!
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こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。

この記事では、個人再生において債務がどれくらい圧縮されるのかという点について解説します。また、個人再生における債務圧縮については「清算価値保障」と「2年分の可処分所得」いうポイントも押さえておく必要があります。

個人再生は現在抱えている債務を大幅に圧縮(減額)することで、再生債務者の月々の弁済額や弁済完了までの期間の負担を軽くすることが目的の手続きです。

そこで今回は、個人再生において具体的にどの程度債務が圧縮されるのか、という点について解説します。

今回のポイント

【個人再生を行うと債務はどれくらい圧縮されるのか】

  1. 小規模個人再生における債務圧縮の基準は2つ
    ①民事再生法の定める最低弁済額
    ②清算価値保障額
  2. 給与所得者等再生における特有の基準もある
    ①2年分の可処分所得
新人司法書士新人司法書士

個人再生を行うと大きく債務が圧縮されることは知っています。でも具体的にどれくらい圧縮されるかは、あまり整理できていないです。

司法書士の本松司法書士の本松

確かに個人再生の債務圧縮については複雑そうなイメージがありますよね。でも個人再生の基本は小規模個人再生ですので、小規模個人再生の場合、基本となるポイントは2つだけあって、給与所得者等再生の場合のみもう1つの基準があると覚えておけば良いでしょう。

小規模個人再生における債務圧縮の基準は2つ

小規模個人再生における債務圧縮の基準は2つあります。①民事再生法の定める最低弁済額 と ②清算価値保障額 です。

個人再生においては再生計画を認可決定を出してもらう課程において、清算価値を算出した「清算価値算出シート」という書類を裁判所に提出します。そして、上記①民事再生法の定める最低弁済額と清算価値算出シートで算出された②清算価値保障額のうち、いずれか金額が大きい方が小規模個人再生における弁済額になるのです。

民事再生法の定める最低弁済額

個人再生における債務の圧縮について考える場合、まず第一の基準となるのが民事再生法の定める最低弁済額です。但し一律に決まった基準があるわけではなく、再生債権の総額により計算方法が異なりますので、注意してください。

民事再生法の条文のままだとやや分かりづらいので、以下に分かりやすくまとめましたので参考にしてください。

民事再生法の定める基準弁済額

■基準弁済額
(無異議債権等が3000万円以下)
①基準債権額が100万円未満 → 基準債権額
②基準債権額が100万円以上500万円未満 → 100万円
③基準債権額が500万円以上1500万円未満 → 5分の1
④基準債権額が1500万円以上3000万円以下 → 300万円
⑤(無異議債権等が3000万円超5000万円以下) → 10分の1

新人司法書士新人司法書士

具体的にどれくらいの債務を抱えているケースが多いですか?

司法書士の本松司法書士の本松

実務上、相談が多いのは300万円~800万円くらいの場合ですね。上記②か③に該当することが多くなります。但し住宅ローン特則を利用する場合は、住宅ローンは再生債権に含まれませんのでよく覚えておきましょう。基準となる債権額はあくまで住宅ローンを除いた債権額です。

清算価値保障額

個人再生における債務圧縮の基準の2つ目は「清算価値保障額」です。

清算価値保障額とは、簡単に言うと「再生債務者が仮に自己破産した際の配当額」です。つまり債権者保護のために、個人再生を行う再生債務者は、少なくとも自身の財産を清算して配当できるだけの金額を再生債権者に弁済しなければならないという考え方に基づいています。これを「清算価値保障の原則」と呼びます。

清算価値保障の原則は、民事再生法で明文化されているわけではありません。再生計画不認可事由を定める民事再生法第174条2項4号において「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」は再生計画不認可事由に該当すると定められていることが、その法的根拠とされています。

(再生計画の認可又は不認可の決定)
第百七十四条 再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
四 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。
引用元:民事再生法第174条2項4号

新人司法書士新人司法書士

民事再生法の定める最低弁済額と清算価値保障額の考え方はよくわかりました。個人再生はもちろん債務者のための手続きですが、債権者も最低限保護すべきという考え方があるのですね。

司法書士の本松司法書士の本松

そのとおりです。再生債権者は経済的損失を受けますから、その損失をできるだけカバーできるように再生債務者に負担を負わせてバランスを取るという趣旨です。

新人司法書士新人司法書士

実際の弁済額は最低弁済額と清算価値保障額のどちらになることが多いですか?

司法書士の本松司法書士の本松

清算価値保障額になることの方が多いですね。自己破産と比べると個人再生の依頼者の方は生命保険や退職金見込額、自動車などの資産がある場合が多いので、計算してみると清算価値保障額の方が大きくなりがちです。

清算価値保障額において自由財産はどのように扱われるのか?

自由財産とは、自己破産において今後の破産者の生活を維持するために手元に残しておくことを認められた財産のことです。つまり破産手続きにおいて自由財産は配当の対象とならずに手元に残しておくことができるのです。

個人再生における清算価値保障の計算においては、自由財産は計算に入れなくても良いという運用になっています。例えば20万円以内の現金は自由財産として保有を認められるため、清算価値を算出する上では考慮しなくても良いよいう扱いになっています。

また、破産手続きにおける換価清算の段階においては「自由財産拡張の申立」を行い、破産財産に組み入れない(=配当に回されず手元に残せる)財産を大きく認めてもらうことが通常の運用です。その場合99万円までの財産が自由財産として認められます。その関係で個人再生における清算価値保障においても、拡張された自由財産も含めて計算に含まなくても良いという運用になります。

つまり再生手続開始決定時に99万円の現金の保有していても、清算価値保障額の算出においては「0円」として計算できるということです。

司法書士の本松司法書士の本松

但し裁判所により運用が異なりますので注意してください。例えば査定額が20万円以下の自動車を清算価値保障額の計算に組み込むか、もしくは除外するか、など管轄の裁判所によって運用が異なります。事前に再生委員や裁判所に確認をとって手続きを進めるようにしましょう。

給与所得者等再生における特有の基準もある

給与所得者等再生の場合は小規模個人再生における2つの基準の他に、給与所得者等再生特有の基準があります。それが「2年分の可処分所得」です。

給与所得者等再生においては小規模個人再生における2つの基準及び2年分の可処分所得のうち、もっとも大きいものが弁済の基準額になります。

2年分の可処分所得とは?

可処分所得とは簡単に説明すると「生計を維持しながら毎月債務の弁済に充てることのできる額」のことです

例えば手取30万円の再生債務者の1カ月あたりの平均生活費や社会保険料等の負担を25万円と考えるのであれば、1カ月あたりの可処分所得は5万円になります。それの2年分なので、5万円×24カ月=120万円。2年分の可処分所得は120万円になり、小規模個人再生における弁済額の基準と比較して、大きい方が再生計画において弁済していく弁済総額になります。

但し、可処分所得は再生債務者が実際に生活に要した金額で計算するのではなく、「再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める」ことに注意が必要です。

具体的には、再生債務者の収入から所得税・社会保険料などの公租・公課を控除し、そこからさらに「政令で定める」生活費を控除したものが、給与所得者等再生における可処分所得となります。

新人司法書士新人司法書士

給与所得者等再生の場合は、基準が3つになるのですね。どの基準額になることが多いですか?

司法書士の本松司法書士の本松

計算してみると2年分の可処分所得がもっとも大きな額になることが多いので、給与所得者等再生では2年分の可処分所得が再生債権の弁済額になることが多いと思います。しかし可処分所得の計算方法は居住地域や再生債務者の年齢などによって異なります。第241条3項の「政令」とは「民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令」を指し、この政令で細かく規定されていますので事前に確認しておきましょう。

(再生計画の認可又は不認可の決定等)
第二百四十一条 前条第二項の規定により定められた期間が経過したときは、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
七 計画弁済総額が、次のイからハまでに掲げる区分に応じ、それぞれイからハまでに定める額から再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額を控除した額に二を乗じた額以上の額であると認めることができないとき。
イ 再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前二年間の途中で再就職その他の年収について五分の一以上の変動を生ずべき事由が生じた場合 当該事由が生じた時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第七十四条第二項に規定する社会保険料(ロ及びハにおいて「所得税等」という。)に相当する額を控除した額を一年間当たりの額に換算した額
ロ 再生債務者が再生計画案の提出前二年間の途中で、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった場合(イに掲げる区分に該当する場合を除く。) 給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を一年間当たりの額に換算した額
ハ イ及びロに掲げる区分に該当する場合以外の場合 再生計画案の提出前二年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を二で除した額
3 前項第七号に規定する一年分の費用の額は、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める。
引用元:民事再生法第241条2項7号、同3項

まとめ

以上、個人再生において債務がどれくらい圧縮されるのかという点について、「清算価値保障」と「2年分の可処分所得」いうポイントも踏まえて解説しました。

今回のポイント

【個人再生を行うと債務はどれくらい圧縮されるのか】

  1. 小規模個人再生における債務圧縮の基準は2つ
    ①民事再生法の定める最低弁済額
    ②清算価値保障額
  2. 給与所得者等再生における特有の基準もある
    ①2年分の可処分所得

個人再生における債務圧縮については、何となく「5分の1程度に圧縮される」と覚えている司法書士も多いと思います。しかし、必ずしも5分の1になるわけではありません、小規模個人再生では清算価値保障額になることも多いですし、給与所得者等再生では2年分の可処分所得になることも多いです。

大幅な債務圧縮が個人再生の利点ですが、具体的にどれくらい債務が圧縮されるのかという点は手続き選択における重要な要因になります。そこまで難しいことではないので、依頼者にしっかり説明できるように学び、正しい判断を下せるように知識を整理しておきましょう。

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