小規模個人再生と給与所得者等再生はココが違う! 両手続きの4つの違いについて解説します。
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こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。

個人再生手続では2種類の申立方法があります。小規模個人再生と給与所得者等再生です。

この記事では、個人再生手続における小規模個人再生と給与所得者等再生の違いについて解説します。

個人再生手続を行う場合、多くのケースで小規模個人再生を選択します。そのため個人再生手続を行う場合、基本的には小規模個人再生を検討し、差し支えがある場合に給与所得者等再生を選択するという考え方で問題ありません。

今回のポイント

【小規模個人再生と給与所得者等再生の4つの違い】

  1. 小規模個人再生は継続的な収入見込みが必要。給与所得者等再生はそれに加えて定期的に変動幅が少ない給与等の収入の見込みが必要。
  2. 小規模個人再生は再生計画の認可に債権者の決議が必要。給与所得者等再生は債権者の決議不要。
  3. 小規模個人再生の弁済額は最低弁済基準以上でなおかつ清算価値保障額以上であること。給与所得者等再生はそれに加えて2年分の可処分所得以上の額であることが必要。
  4. 給与所得者等再生には再度の申立てにつき期間制限がある。再生計画認可決定の確定後、7年間は給与所得者等再生による個人再生や自己破産は利用できない。自己破産による免責許可決定確定後7年間も同様に給与所得者等再生手続は利用できない。
新人司法書士新人司法書士

小規模個人再生と給与所得者等再生は、どのような依頼者に適しているのですか?

司法書士の本松司法書士の本松

いずれの手続を選択するにしても、そもそも個人再生手続を行う要件として継続的な収入があることが必要です。個人再生手続を行う場合は小規模個人再生をまず検討すべきですが、その上で、さらに変動幅の少ない定期的な収入を見込める依頼者は給与所得者等再生も検討することができます。大手企業のサラリーマンや公務員などが主な対象だと思ってください。

新人司法書士新人司法書士

小規模個人再生が基本なのですね。では給与所得者等再生はどのようなケースで選択するのですか?

司法書士の本松司法書士の本松

給与所得者等再生を検討するのは「債権者の決議を得ることが困難である場合」と考えてください。給与所得者等再生は債権者の決議が不要なので、同意しない債権者が見込まれる場合に検討すべきです。

【ポイント1】給与所得者等再生は定期的に変動幅が少ない給与等の収入の見込みが必要

個人再生手続の基本は小規模個人再生ですが、個人再生自体が手続き終了後に再生計画で定められた金額を3年~5年の間、継続的に弁済していく手続きなので、そもそも継続的な収入が見込める債務者でないと利用できません。例えば年金生活をしている80歳代の債務者などは、なかなか利用も難しいのではないかと思います。

給与所得者等再生ではその要件がさらに厳しくなります。継続的な収入があるのはもちろんのこと、さらに「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者」であり「その額の変動の幅が小さいと見込まれる」という2つの要件が加わります。これは給与所得者等再生においては再生債権者の決議不要にて債務の減額を認めることになるので、再生債務者の再生債権の弁済原資について厳格に担保する必要があるという考え方に基づいているからです。

(手続開始の要件等)
第二百三十九条  第二百二十一条第一項に規定する債務者のうち、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「給与所得者等再生」という。)を行うことを求めることができる。

引用元:民事再生法第239条1項

司法書士の本松司法書士の本松

「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者」「その額の変動の幅が小さいと見込まれる」という要件を満たしていると必ず給与所得者等再生を選択するわけではないので、勘違いしないようにしましょう。要件を満たしている場合でも、あくまで小規模個人再生が基本です。

【ポイント2】小規模個人再生は再生計画の認可に債権者の決議が必要。給与所得者等再生は債権者の決議不要。

小規模個人再生と給与所得者等再生の最大の違いといえるポイントは、「再生債権者の決議の必要性」です。小規模個人再生では再生債権者の決議が必要ですが、給与所得者等再生では決議は不要です。この点こそが、いろいろと制限の多い給与所得者等再生を選択する最大のポイントです。

小規模個人再生に比べて給与所得者等再生は利用できる債務者の要件も厳しいですし、再生計画のハードルも高いです。小規模個人再生に比べて再生債権額が大きくなってしまうケースも多いですので、再生債務者の金銭的な負担は大きくなってしまいます。それでも小規模個人再生ではなく給与所得者等再生を選択するのは、再生計画認可決定において再生債権者の決議が不要だからです。

例えば、再生債権額の2分の1以上の債権を有する再生債権者があった場合、その1人が同意しないだけで再生計画は認可されなくなってしまいます。同意が見込めない大口の再生債権者がいる場合、または同意しない債権者数が複数に及びそうな場合などは、給与所得者等再生を選択せざるを得ません。

小規模個人再生における再生債権者の決議要件

小規模個人再生においては再生計画案につき、次の要件を満たす再生債権者の同意が必要です。しかし積極的同意までは必要としておらず消極的同意で足ります。つまり「再生債権者が反対意見を出さなければ同意したものとみなす」という取り扱いになっています。

小規模個人再生における再生計画認可要件(債権者の同意)

再生計画案に同意しない債権者が以下の条件を満たさないこと

  • 再生債権者の総数の過半数
  • 同意しない債権者の債権額が再生債権総額の2分の1を超えないこと
新人司法書士新人司法書士

債権者はどのような場合、同意しないのですか?

司法書士の本松司法書士の本松

通常であれば同意することが多いと思います。しかし ①一度も返済していない債権者 ②金融機関以外の債権者 がある場合は同意しない可能性もあります。例えば、日本学生機構の奨学金を利用していた場合、機構は①に該当すると同意しないという運用をとっています。奨学金債権がある場合は注意が必要です。債権者が金融機関ではない法人や個人の場合は反応が予測できないので、不同意の可能性も十分に考えられます。

新人司法書士新人司法書士

なるほど。ではもっと確実に同意するかどうかを事前に調べる方法はないですか?

司法書士の本松司法書士の本松

債権者に「小規模個人再生で申立を行った場合、再生計画に同意しますか?」とストレートに聞いてみるのも有効です。金融機関の債権者であれば意外と教えてくれますよ。

【ポイント3】小規模個人再生の弁済額は最低弁済基準以上でなおかつ清算価値保障額以上であること。給与所得者等再生はそれに加えて2年分の可処分所得以上であることが必要。

再生債権の弁済額の基準についても、小規模個人再生と給与所得者等再生では異なります。給与所得者等再生は再生債権者の決議を経ずに再生計画が認可されるため、小規模個人再生と比べると弁済額についてより厳格な要件が求められています。

小規模個人再生と給与所得者等再生の最低弁済額の基準

【小規模個人再生の最低弁済額の基準】
⇒基準弁済額 または 清算価値保障額 いずれか大きい金額

■基準弁済額
(無異議債権等が3000万円以下)
基準債権額が100万円未満 → 基準債権額
基準債権額が100万円以上500万円未満 → 100万円
基準債権額が500万円以上1500万円未満 → 5分の1
基準債権額が1500万円以上3000万円以下 → 300万円
(無異議債権等が3000万円超5000万円以下) → 10分の1

■清算価値保障額 ⇒ 再生債務者が仮に破産した場合の配当額

【給与所得者等再生の最低弁済額の基準】
⇒小規模個人再生の最低弁済額 または 2年分の可処分所得の いずれか大きい金額

■可処分所得 ⇒ 生計を維持しながら返済に回せる額(※再生債務者の住所地により基準が異なります)

(再生計画の認可又は不認可の決定)
第二百三十一条 
2 小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。
三 前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円を超え5000万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第84条第2項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の十分の一を下回っているとき。
四 第2号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の五分の一又は100万円のいずれか多い額(基準債権の総額が100万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の五分の一が300万円を超えるときは300万円)を下回っているとき。

引用元:民事再生法第231条2項3号、同4号

(再生計画の認可又は不認可の決定等)
第二百四十一条 
2 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
七 計画弁済総額が、次のイからハまでに掲げる区分に応じ、それぞれイからハまでに定める額から再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した額に二を乗じた額以上の額であると認めることができないとき。
イ 再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前2年間の途中で再就職その他の年収について五分の一以上の変動を生ずべき事由が生じた場合 当該事由が生じた時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法(昭和40年法律第33号)第74条第2項に規定する社会保険料(ロ及びハにおいて「所得税等」という。)に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額
ロ 再生債務者が再生計画案の提出前2年間の途中で、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった場合(イに掲げる区分に該当する場合を除く。) 給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額
ハ イ及びロに掲げる区分に該当する場合以外の場合 再生計画案の提出前2年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を二で除した額

引用元:民事再生法第241条2項7号

新人司法書士新人司法書士

給与所得者等再生の方が要件が厳しくなりますか?

司法書士の本松司法書士の本松

そうですね。小規模個人再生の基準をクリアしつつ、さらに2年分の可処分所得以上である必要があります。実際に計算してみると2年分の可処分所得の方が大きくなるケースが多いので、一般的には給与所得者等再生を選択した方が弁済額は大きくなる可能性が高いです。

    【ポイント4】給与所得者等再生には再度の申立てにつき期間制限がある

    給与所得者等再生の場合に限り、再度の申立てにつき期間制限があります。再生計画認可決定の確定から7年間は、再度の申立てを行うことができません。なお、再生計画認可決定の確定から7年間は給与所得者等再生手続が制限されるだけではなく、自己破産における免責不許可事由に該当しますので、自己破産手続も制限(免責許可決定が出ない)されてしまいますハードシップ免責決定があった場合も同様に確定から7年間は利用できません。

    また、自己破産における免責許可決定の確定から7年間も同様に、給与所得者等再生手続は利用できなくなってしまいます。

    (手続開始の要件等)
    第二百三十九条 
    5 前項に規定する場合のほか、裁判所は、第2項の申述があった場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があることが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を小規模個人再生により行う旨の決定をする。ただし、再生債務者が第3項本文の規定により小規模個人再生による手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
    二 再生債務者について次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から7年以内に当該申述がされたこと。
    イ 給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
    ロ 第235条第1項(第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
    ハ 破産法第252条第1項に規定する免責許可の決定が確定したこと 当該決定の確定の日

    引用元:民事再生法第239条5項

    新人司法書士新人司法書士

    給与所得者等再生から7年以内に返済が困窮したらどうすればいいですか?

    司法書士の本松司法書士の本松

    その場合は自己破産も給与所得者再生手続もできなくなってしまいます。小規模個人再生による申立を行うか、任意整理を行うしかないでしょうね。

    まとめ

    以上、個人再生手続における小規模個人再生と給与所得者等再生の違いについて解説しました。

    今回のポイント

    【小規模個人再生と給与所得者等再生の4つの違い】

    1. 小規模個人再生は継続的な収入見込みが必要。給与所得者等再生はそれに加えて定期的に変動幅が少ない給与等の収入の見込みが必要。
    2. 小規模個人再生は再生計画の認可に債権者の決議が必要。給与所得者等再生は債権者の決議不要。
    3. 小規模個人再生の弁済額は最低弁済基準以上でなおかつ清算価値保障額以上であること。給与所得者等再生はそれに加えて2年分の可処分所得以上の額であることが必要。
    4. 給与所得者等再生には再度の申立てにつき期間制限がある。再生計画認可決定の確定後、7年間は給与所得者等再生による個人再生や自己破産は利用できない。自己破産による免責許可決定確定後7年間も同様に給与所得者等再生手続は利用できない。

    個人再生における基本は小規模個人再生ですが、再生債権者の中で再生計画に不同意がありそうな債権者(特に債権額の大きい大口債権者)がある場合は、給与所得者等再生手続を検討しましょう。しかし、給与所得者等再生手続には、弁済額が大きくなる(可能性がある)、以降7年間は給与所得者等再生や自己破産ができないというデメリットがありますので、手続選択の際には十分注意が必要です。自己破産も含めて改めて検討してみるもの有効です。

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