個人再生で養育費はどうなる? 個人再生における養育費の取り扱いについて解説します
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こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。

この記事では、個人再生手続において養育費はどのように取り扱われるかについて解説します。

個人再生は、債務額を大きく減額することで再生債務者の生活再建を促すための手続です。しかし、再生債務者が養育費の負担を負っている場合もあります。再生債務者の生活再建も大切ですが、養育費により保護される子の福祉も同じように大切です。それでは、個人再生において養育費債権はどのように取り扱われるのでしょうか?

今回のポイント

【個人再生手続において養育費はどのように取り扱われるか?】

  • 個人再生において養育費は「非減免債権」として扱われる
  • 個人再生での非減免債権の取り扱い
  • 再生手続開始決定前と決定後に発生した養育費は取り扱いが異なる点に注意
  • 再生債権の弁済終了後に残債務一括弁済が基本
新人司法書士新人司法書士

自己破産の場合は、養育費は非免責債権とされるので、免責許可決定が出ても支払義務は消滅しませんよね?

司法書士の本松司法書士の本松

よく勉強できていますね。その通りです。

新人司法書士新人司法書士

個人再生の場合も自己破産と同じく、養育費は手続から外れるのではないですか?

司法書士の本松司法書士の本松

個人再生における養育費の取り扱いはやや特殊です。養育費も他の一般債権と同じく取り扱われますし、再生計画で定められた減額の基準に従って弁済します。しかし、再生計画に従った弁済を行った後でも、減額された残額の支払義務が消滅しないのが、他の債権と決定的に違う点です。

個人再生において養育費は「非減免債権」として扱われる

自己破産の場合に養育費が免責されないのは、養育費の性質上、養育費債権者である子の福祉を考えた場合、免責することが社会的通念上、妥当ではないという考えに基づいています。

一方、個人再生は自己破産とは違い、手続後も減額された債務の弁済を継続させる必要があります。再生債務者の生活再建が目的の手続ですから、過大な養育費の負担により生活再建を妨げるのはいかがなものか?という考え方もあります。

そのため、個人再生における養育費は「非減免債権」と呼ばれて、他の一般債権とは違う考え方をする必要があります。なお、非減免債権は他に以下のようなものがあります。

個人再生における非減免債権
  1. 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(ケンカでケガを負わせた場合など)
  2. 故意または重過失による人の生命や身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(悪質な交通事故など)
  3. 養育費、婚姻費用など扶養義務に係る請求権
司法書士の本松司法書士の本松

単に交通事故でケガさせただけで上記2に該当するわけではありません。故意や重過失があることが要件です。故意性・重過失性の認定で争いがある場合は、個人再生手続内で確定することはないため、別途訴訟等で確定させることになります。なお、再生債権者の同意があれば、減免について取り決めをすることも可能です。

再生計画による権利の変更の内容等)
第二百二十九条  
3  第一項の規定にかかわらず、再生債権のうち次に掲げる請求権については、当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない。
一  再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
二  再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
三  次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの

引用元:民事再生法第229条3項

個人再生での非減免債権の取り扱い

個人再生手続において養育費などの非減免債権はどのように扱われるのでしょうか?

結論としては「個人再生手続においては他の一般債権と同様に扱われる。但し、再生債権として弁済が完了しても残債務の支払義務は消滅しない」という取り扱いになっています。

個人再生では形式的平等が基本的な考え方なので、養育費のように保護されるべき非減免債権であっても特別扱いをすることはできません。具体的には、他の債権と同様に申立時の債権者一覧表に記載する必要がありますし、再生計画においては他の債権と同様の弁済基準に従って弁済を行います。

新人司法書士新人司法書士

自己破産の場合、養育費は非免責債権なので、他の債権者への支払を停止しても引き続き支払を行いますよね? 個人再生の場合はどうすればいいのですか?

司法書士の本松司法書士の本松

個人再生手続を行う場合、他の債権者への弁済を停止した後の養育費の支払いは偏頗弁済だと判断されてしまいます。依頼者に他の債権者と同じタイミングで支払を止めるように伝えておきましょう。

個人再生の申立てを行う前に養育費減額の申立てを行うことも有効

個人再生の申立てを行う要件は、「債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」または「債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」です。つまり自己破産を検討しなければならないほど、債務の返済に困窮している場合ですね。

そのような状態だと当初予定されていた養育費の支払もかなり苦しくなっているはずです。状況が許せば、個人再生の申立前に家裁に養育費減額の申立を行い、養育費債権額自体を減額させておくことも有効です。

司法書士の本松司法書士の本松

養育費は非減免債権なので、個人再生の手続によって支払いのタイミングは変化しますが、支払額自体が減少するわけではありません。そのため支払額自体を減額させる手続を事前に行うことも有効です。「個人再生の申立予定です」ということも減額の合理的な理由になり得ます。

再生手続開始決定前と決定後に発生した養育費は取り扱いが異なる点に注意

個人再生手続の養育費債権について特に注意が必要なのが、債権の発生したタイミングです。つまり再生手続開始決定前の養育費と決定後の養育費は、それぞれ分けて考える必要があるのです。再生手続開始決定前の日付で既に発生していた養育費(毎月末に養育費を支払う取り決めになっている場合、再生手続開始決定の前月の支払分まで)は再生債権となりますが、それより後に支払期限が到来する養育費(再生手続開始決定月以降の支払分)は「共益債権」として扱われるのです。

共益債権とは?

共益債権とは、本来、支払を履行することで再生債権者全体の利益に繋がる債権のことを指し、個人再生手続においても減額されず当初の弁済額をそのまま支払う必要のある債権です。しかし個人再生においては、再生債務者の生活維持のために、または社会通念上、支払いを行うことが妥当であると判断される債権、という意味合いでも使われます。例えば、再生債務者の自宅の家賃や光熱・通信費、財産管理・処分に要する費用などです。また再生手続開始決定後に生じた債権も共益債権となります。

(共益債権となる請求権)
第百十九条  次に掲げる請求権は、共益債権とする。
二  再生手続開始後の再生債務者の業務、生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権
七  再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で、再生手続開始後に生じたもの(前各号に掲げるものを除く。)

引用元:民事再生法第119条2号、同7号

新人司法書士新人司法書士

再生手続開始決定後の養育費の支払はどうなるのですか?

司法書士の本松司法書士の本松

再生手続開始決定後は遅れずに毎月養育費を支払うことになります。これは再生計画認可決定後も同様です。つまり再生債権の弁済期間中の養育費の支払いは、①共益債権としての毎月の養育費 ②再生債権として不払いの養育費(再生計画により減額されたもの)の2つを合わせて支払う必要があるということです。

新人司法書士新人司法書士

そうなんですね。最初から把握していないと予想外に月々の支払額が大きくなってしまいますね。

司法書士の本松司法書士の本松

その通りです。そのため再生計画を作成する際には共益債権としての養育費に支払いも考慮した上で弁済計画を立てる必要があるので、注意してください。

    再生債権の弁済終了後に残債務一括弁済が基本

    再生債権の弁済が終了しても減額された養育費の弁済義務は消滅しません。そのため再生計画に定められた弁済期間が終了すると、個人再生により減額された養育費は、減額された分を一括で支払う必要があります。

    (再生計画の効力等)
    第二百三十二条  
    4 第2項に規定する場合における第229条第3項各号に掲げる請求権であって無異議債権及び評価済債権であるものについては、第156条の一般的基準に従って弁済をし、かつ、再生計画で定められた弁済期間が満了する時に、当該請求権の債権額から当該弁済期間内に弁済をした額を控除した残額につき弁済をしなければならない。

    引用元:民事再生法第232条4項

    新人司法書士新人司法書士

    一括ですか?それは状況的に難しい債務者もいるのでは?

    司法書士の本松司法書士の本松

    そうですね。そのため、再生債権の支払期間中に少しずつ蓄えておくか、または養育費債権者と事前に協議しておいて分割払いに応じてもらうという選択肢もあるかと思います。いずれにしても予め対策を練っておかないと対応できなくなってしまいます。

    まとめ

    以上、個人再生手続において養育費はどのように取り扱われるか?という点について解説しました。

    今回のポイント

    【個人再生手続において養育費はどのように取り扱われるか?】

    • 個人再生において養育費は「非減免債権」として扱われる
    • 個人再生での非減免債権の取り扱い
    • 再生手続開始決定前と決定後に発生した養育費は取り扱いが異なる点に注意
    • 再生債権の弁済終了後に残債務一括弁済が基本

    自己破産において養育費は非免責債権として扱われるために、個人再生においても同様に手続から外れるものと勘違いしている司法書士も多いと思います。勘違いしたまま「養育費は個人再生からは外れるので、引き続き同じように支払いを続けてください」と誤った指示をしてしまうと大問題です。偏頗弁済とみなされ「返還請求するべき債権」とみなされてしまいます。

    偏頗弁済と判断された場合、実務上は実際に返還請求を行わずに、返還請求権を債権として再生債務者の清算価値財産に計上する運用が多く行われます。依頼者の弁済する再生債権額が大きくなる結果になり兼ねないので、依頼者に損失を与えることになってしまいます。

    そのようなことにならないように、事前に依頼者にはしっかりと説明をしつつ再生手続を進めましょう。

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