自己破産における返済能力の基準! 支払不能はどう判断すべきか?
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こんにちは。
これまで5032件の借金問題を解決してきた、ひまわり司法書士法人の本松です。

この記事では、自己破産における返済能力の基準について解説します。

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自己破産するためには裁判所に返済能力が無いと認定してもらうことが必要ですよね?でも具体的な判断基準がどこにあるのか見極めが難しいですね。

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そうですね。返済能力が有ると判断されると破産手続開始決定が出ませんので、当然その先の免責許可決定も出なくなってしまいます。自己破産における返済能力の有無の判断については、この記事でしっかり学んだ上でそれぞれの司法書士が自分なりの基準を設定することが大切です。

今回のポイント

【自己破産における返済能力の考え方】

  • 自己破産するには「返済能力が無いこと=支払不能」が前提
  • 支払不能には2つの要件がある
  • 自己破産の返済能力の確認における注意点=見落としがちな財産に注意しよう
  • 司法書士本松の「自己破産における返済能力」の判断基準

自己破産するには「返済能力が無いこと=支払不能」が前提

自己破産するには返済能力が無いことが前提になければいけません。破産法では破産手続開始の原因として、債務者が「支払不能」であることを求めています。

(破産手続開始の原因)
第十五条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。
引用元:破産法第15条
さらに「支払不能」とは「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」と定義されています。

 (定義)

第二条 
11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。
引用元:破産法第2条第11項

返済能力がない状態と認められない限りは自己破産の手続きができないということになります。では、どのような状態が支払不能と認められるのでしょうか。

 支払不能には2つの要件がある

破産法第2条第11項によると、支払不能状態と認められるには

 ・支払能力を欠いていること

・一般的に支払いできない状態が継続していること

 という2つの要件を満たす必要があります。

支払能力を欠いている

支払能力は,債務者の次の3要素から構成されます。

支払能力を構成する3要素
  • 財産
  • 信用
  • 労力・技能

     支払不能かどうかを図る明確な基準はなく、金銭等財産上の給付を履行し得る債務者の経済的力量のことを指します。つまり支払能力については、単に債務者の資産だけではなく、信用や労力・技術によって調達できる金銭も含めて総合的に判断されるということです。
    債務者の信用や労力、技能等によってお金を調達することができれば支払能力があると判断されるため、財産がなく支払能力に欠けていることにはなりません。

    逆に債務者に資産があったとしても、換価すること自体が困難であることや、それを上回る借金をしている場合もあります。すると財産をもって債務を弁済することができないことになり、支払能力を欠いていると評価されることがあります。

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    どんなものが換価することが困難な財産と言えますか?

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    過疎地の不動産などですね。仮に売却しようとしても買い手が誰もいないような物件は、換価ができません。

    一般的に支払いできない状態が継続していること

    失業や長期的な病気で職に就くことが難しい場合や、大幅な給料削減でしばらく回復の見込みがない場合など、将来的に継続して支払いができない状態にあることを指します。

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    コロナ禍で仕事が激減した場合も該当します。ひまわり司法書士法人では、乗車時間が激減して収入が落ちたタクシードライバーの依頼者がいました。

    支払停止

    支払不能とよく似た言葉に「支払停止」があります。支払停止とは、支払不能であることを自ら表示する行為のことをいい、支払停止があれば、破産法第15条第2項の規定により、支払不能であることが推定されます。

    具体的には、支払いができないことの通知や弁護士・司法書士からの受任通知(介入通知)、夜逃げや廃業などが、支払停止の典型的な行為とされています。

    自己破産の返済能力の確認における注意点

    自己破産の相談に来る方は資産がないと思いがちですが、そうとは限りません。見落としがちなポイントを挙げますので、自己破産の申立て準備の段階でしっかりと確認しましょう。

    生命保険の解約払戻金

    積立型の保険契約をしている方は、解約払戻金の返還請求権があります。つまり保険を解約して戻ってくるお金があるのであれば、その請求権が財産とみなされるということです。

    契約して日が浅いのであればそれほど大きな額になっていないと思いますが、契約して数年以上経過しているのであれば注意が必要です。早めに解約払戻金の額を確認しておきましょう。

    退職金見込額

    勤務先に退職金制度がある場合も注意が必要です。自己破産手続きにおいては、将来的に発生する債権として退職金見込額も資産として計上します。しかしすぐに退職するわけではないですし、退職時の会社の状態によって支払状況が悪化する可能性もありますよね。そのため、退職金については、破産手続開始決定時の見込額の8分の1(退職間近なら4分の1)の額を申立人の資産として計上する運用になっています。

    遺産分割未了の相続財産

    まだ受け取っていない遺産分割未了の相続財産も、資産とみなされます。

    なお、自己破産手続きにおいては一定範囲内の自由財産(手元に残しておいて良い財産)以外の財産は、破産管財人により換価され債権者への配当に回されます。そのため、遺産分割未了の財産を没収されないように、意図的に他の相続人に相続させるケースもありますが、これは危険なので絶対にやめましょう。正当な理由があれば別ですが、意図的に債務者の財産を毀損・減少させる行為は、重大な免責不許可事由に該当してしまいます結果的に債権者への配当を少なくすることに繋がるからです。

    筆者の「自己破産における返済能力」の判断基準

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    自己破産の返済能力についての、考え方はよくわかりました。でも結局、具体的にはどこにラインを引けばいいのでしょうか?

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    それは司法書士の各自が自分で考えるしかないですね。私は次の基準で考えています。

    「返済能力が無い=自己破産案件に該当」という判断基準(司法書士本松の場合)
    • 既に支払ができていない または 近い将来支払ができない状態になる可能性が高い
    • 資産をすべて換価しても債務の弁済ができない
    • 自己破産の障害事由(職業資格、売却したくないマイホーム保有など)がない
    • 生計を維持しながら分割弁済をした場合4年以内に完済できない

    これらをすべて満たしていると自己破産を検討すべき案件だと判断します。特に大切なのが「生計を維持しながら分割弁済をした場合4年以内に完済できない」という点です。

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    なぜ4年なのですか?

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    任意整理の場合、最長で5年払い(60回分割)までしか応じない債権者が多いので、60回以内に完済できないのであれば、自己破産を検討せざるを得ません。しかし実際に60回分割で和解しても返済期間が長すぎるため、債務者にとって負担が大きくなりすぎるケースが多いです。そのため私はもう少し基準を引き下げて4年というラインを引いています。

    まとめ

    以上、自己破産における返済能力の考え方について解説しました。

    今回のポイント

    【自己破産における返済能力の考え方】

    • 自己破産するには「返済能力が無いこと=支払不能」が前提
    • 支払不能には2つの要件がある
    • 自己破産の返済能力の確認における注意点=見落としがちな財産に注意しよう
    • 司法書士本松の「自己破産における返済能力」の判断基準

    最初は判断が難しく感じるかもしれませんが、慣れてくると自己破産を検討すべき返済能力なのかどうかはすぐに判断できるようになります。面談時にしっかり聞取りを行い、相談者に的確な提案ができるように学んでおくことが大切です。

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